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宮崎歯科医院 院長取材

虎ノ門、桜田通りを歩いていると、ビルが連なるオフィス街とは対照的な、温かみのあるレトロな雰囲気のサンルームがある。そこが「宮崎歯科医院」だ。1976年開業の「大島歯科医院」を引き継いで2010年に開業したのは宮崎仁院長。先代の大島弘子院長に多大なる影響を受けて歯科医師となり、その腕を見込まれて跡を継いだという。張りのある快活な声で、歯科医師にとって不利益になりそうなことでも率直に話す。その人柄は、おおおらかで屈託がなく、安心できる雰囲気だ。特に「かみあわせ治療」「インプラント治療」では評判の高い歯科医院だが、「基本的なことをしっかりやるだけ」「手間を惜しまない、誠実に努力するだけ」と話す宮崎院長。大学病院において臨床・研究・教育に携わった経験をもつ宮崎院長に、歯科治療の現在について存分にお話しいただいた。

歴史ある歯科医院を引き継ぐ

―歴史のある歯科医院を引き継いで開業されていますが、そのいきさつを教えてください。

ここは大島弘子先生が昭和51年に開院された大島歯科医院という歴史ある歯科医院でした。近くで働いていた父がお世話になっていまして、「素晴らしい先生だからお前も一緒に来い」といわれて、小学生の頃から私もお世話になりました。私の記憶では小学校6年生頃だと思っていたのですが、大島先生は「もっと小さい頃から知っている」と仰っていましたね。女性の院長先生なのですが、男気のある豪快な性格で(笑)、それがとても魅力的な先生でした。公私共々お世話になり、私が歯科医師を目指したのも、大島先生との出逢いがきっかけです。それ以来、歯科医師を目指して勉強し、大島先生の母校である大学に入学し、歯科医師の道を歩むようになりました。その後は、大学院へと進学し、博士号を取得しました。大学病院の補綴(かみあわせ)専門の診療科に在籍し、臨床・研究・教育に携わっておりました。今から9年前、「医院を手伝ってくれないか」とのお話をいただき、ご一緒させていただくようになりました。3年前に、大島先生が急逝され、これまで長く大島歯科医院を愛して下さったお付き合いのある患者様に、ご迷惑をおかけしたくないという思いより、2010年に継続開院いたしました。本当は「大島歯科医院」の名前を残したかったのですが、保健所の登録上変えざるを得ませんでした。

―親族ではない方のクリニックを引き継ぐというのは大変珍しいケースです。ご苦労が多かったのでは?

医院の継承には正直、大変な苦労を伴いましたが、通院中の患者様にご迷惑をおかけせずに済んだので、その苦労も報われました。大島先生と血のつながりはありませんでしたが、私を実の子のように、時には厳しく、時には優しく接してくれました。この医院と共に育ち、歯科医師になりましたので、この医院を引き継ぐ事は、私にとって決して珍しい事ではありませんでしたね。昭和51年に作られた歯科医院なのですが、カフェのような温かみのある待合室、当時では珍しいカウンセリングルーム、診療室がパーテーションで区切られた個室になっているなど、現在でも十分に通用する作りになっています。その当時から歯科医療の先端を行く診療室だったようです。古さと云うよりは、歴史を感じさせるつくりになっていますね。待合室の居心地の良さなんて、このままカフェにしちゃってもいいくらいです(笑)。最近知ったのですが、近隣の方々からは、「高級そうな歯科医院」と思われていたそうで(笑)。そんなことありません、普通の歯科医院なんでいらしてくださいとお話しました(笑)。

―どんな患者層でしょうか。どのような治療が多いですか?

虎ノ門というオフィス街、近くには霞が関・神谷町もあり、近隣で働くサラリーマンの方々が多いですね。また、交通の便がいいことから、遠方よりご紹介で来院される方々も同様に多いです。来院してくださる患者様は、皆明るくて、元気、いい方ばかりですよ、いつも元気を頂いてます。ただ、患者様のお話を伺っていると、多くの歯科医院を転々とし、大変なご苦労をされています。そんな患者様にとって、私が「最後の砦」となるべく、毎日一生懸命に臨床に取り組んでいます。治療は、一般歯科だけでなく、インプラント治療、歯周病治療、審美歯科治療、ホワイトニングなど、幅広く行っています。しかし、その基軸は「かみあわせ」の治療ですね。歯科疾患は、内科的な疾患とは異なり、歯を失うと元には戻らない硬組織の疾患です。そのため、義足や義眼と同様に、入れ歯や冠・つめもの、インプラントなどを代用として口内に装着して、機能回復の術とします。これには「かみあわせ」という概念が重要な役割を果たすのです。「かみあわせ」の異常は、様々な症状を口腔内だけでなく、頭頸部から全身に引き起こします。「かみあわせ」の治療はとても大切なことなのですが、その専門性の高さより、残念ではありますが、すべての歯科医師が適正に行える状況にはないんです。

病“気”を治す歯科治療

―治療で心がけていらっしゃることは何でしょうか。

「病気」とは、「病(やまい)」と「気(き)」という文字からなりますよね。病気の「病」とは「疾患」であり、「気」とは「疾患を煩った患者さんの心の病」のことでしょう。私は、日々の歯科治療において、病気の「病」だけでなく、「気=こころ」を癒す治療を心がけています。そのためには、患者様との「コミュニケーション」が大切です。日々進歩する歯科医学を貪欲に学び吸収し、知識・技術を最高レベルに維持するとともに、患者様の「気=心の病」には、スタッフ総出で、コミュニケーションを大切にしています。治療法の選択は、科学的根拠に基づき、可能な限り最高の治療法を提供したいのですが、それが患者様にとって最高ではないこともあるんです。その理由は時間、費用、希望、治療に対する不安など様々です。こういったことを、患者様との密接なコミュニケーションを通して解消し、「歯科医師にとって、最高の治療ではなく、患者様にとって最善の治療」を提供する。これが宮崎歯科医院の治療で一番心がけている事ですね。

―患者さんの心のケアもするということでしょうか。

おっしゃるとおりですね。歯でお悩みの方、特に「かみあわせ」で困っている方は、精神的にも参っている方が非常に多いんです。原因としては、仕事、人間関係、環境の変化、歯科治療の悩みなど様々です。これは脳科学的にもにも関係があって、ストレスを感じる大脳の扁桃核という部分が、歯軋りを誘発しているんです。責任ある役職にある方は、必ずと言っていいくらい歯軋りをされています。だからその心のありようを無視して治療をする事はできないんです。論文的にも、歯軋りは精神的なストレスと密接な関係があるとされ、精神的ストレスは、咬合(かみあわせ)の異常を増悪する因子とされています。歯のことだけでなく、今抱えているお悩みを、コミュニケーションで聞き取ることがとても大切なんです。心の悩みが原因の場合、しっかりとお話しを伺うことで、自然と症状が無くなる方もいらっしゃいます。安心されるからでしょうね。だから、スタッフには、「時間なんて気にしなくてもいい、とにかく患者さんのお話をしっかりと時間をかけて聞いてみてね!」といつも言っています。それだけで解決する問題はたくさんあるんです。

―かみあわせ治療に定評があるとお聞きしていますが、特別なことをされているのでしょうか。

いえ、それがまったく。当院で治療して「今までの歯科医院では治らなかったのに凄い!」と仰ってくださる患者様がいらっしゃいますが、自分としては、ごく普通にごく普通のことをやっているだけなんです(笑)。ただ、私の場合は、日本における「かみあわせ」治療の第一人者である師匠のもとで、臨床・研究・教育に携わっておりましたので、そういった経歴が、特別なことなのかもしれませんね。現在でも多くの素晴らしい先生方に教えを頂いてます、日々勉強です。「かみあわせ」というと、上あごの歯と下あごの歯の接触のことをいいますが、それだけではないんです。上あごは、頭がい骨にくっついていますが、下あごは、筋肉でぶら下がっている。この下あごの位置を決めているのが、上下の歯の「かみあわせ」なんですが、歯を失うと、下あごの位置が偏位してしまう。これを様々な方法で、適正な位置に戻すこと、これが「かみあわせ」の治療なんです。歯科治療の経験の多い方は、下あごの位置がズレていることが多い。下あごのズレは、様々な症状を全身に引き起こすので、治療が必要になるんです。

「ひと手間」を惜しまない治療

―無痛、再治療のない治療を掲げてらっしゃいますね。

以前、私が技術的に未熟だった頃、患者様にいわれた言葉があるんです。「痛くないようにするための麻酔なのに、その麻酔が痛いのってどうして?」ってね(笑)。たしかにその通りですよね。無痛麻酔を心がけるようになったのはそれからなんです。また、私の医院には、全顎的に治療をしなくてはいけない患者様が多く来院されます、つまり来院回数も多くなる。毎回毎回痛いのは患者様も辛いし、私も辛い。だから無痛麻酔、無痛治療なんです。無痛治療には、ちょっとしたコツはありますが、一番気を付けているのは、患者様に対する「お声掛け」です。いきなりブスっと刺されたら痛いですよね(笑)。今起きている事を実況するようにお話しつつ治療をするんです。皆さん安心されて治療を受けられていますよ。現在の日本の歯科治療の80%がやり直し治療といわれています。私は可能な限り、自分の治療した歯は、2度と治療をしたくないんです。そのためには、その原因を究明する綿密なる診査と診断、治療計画に基づく適切な治療法、これが大切なんです。歯科疾患はシンプルです。「虫歯」か「歯周病」か「かみあわせ」、この3つの組み合わせなんです。シンプルに原因を突き止め、元通りに近く治す事。これが再治療のない結果につながるんです。歯科医療は日進月歩、新しい医療技術の習得は当然必要な事ではありますが、人間や歯の形が変わったりはしないんです。先人・先達に学び、日々精進を心がけています。治療が終了した患者様にはいつもいう言葉があるんです。「もう2度と僕の顔を見ないようにしてくださいね!」ってね(笑) 私の顔を見なくちゃいけない時は、治療が必要な時なんで。「今後は、歯のクリーニングでスタッフの女の子に会いに来て下さい」って言ってます(笑)。

―患者様とのコミュニケーションに時間をかける、ひと手間惜しまないというスタンスはどこから身につけたものでしょうか。

歯科治療の治癒までの道のりは、「山登り」に例えるとわかりやすいんです。登頂する(治す)ためには、患者様はご自分の足で登らなくてはならない。便利なヘリコプターで登頂するという方法はないんです。歯科医師は、その手助けをするだけ。どんな山に、どんなルートで登るのか、つまりはどんな症例にどんな治療方法で、どんな治療計画をたてるのかを適切な診査診断をもとに患者様と相談して決めていくんです。難症例、つまりは、登頂するが難しいエベレストならば、準備と心構え、時間が必要です、小さな山ならそんな必要もない。患者様とのコミュニケーションに時間をかけるのはそのためなんです。治療計画を立てたならば、正確に実行しなくては意味がない、ゴール(治癒)に向かって歩いているのか?ひとつひとつ確かめながら進まないといけない。そんなことから、ひと手間を惜しまないスタンスが生まれたのかもしれませんね。

―先生のご趣味は何でしょうか。

トレーニングです。もともと父の影響から武道をやっていたのですが、最近は暇がなくて。高校時代は剣道部、大学時代には、近くの警察署の道場で毎朝柔道の練習をさせてもらってました。もう本当に強い人たちばかりで、朝練習でぼろ雑巾のように投げ飛ばされてから大学に行って勉強して(笑)。“強い人は沢山いる、上には上がいる”という実感は、生きる姿勢を身につける上で役に立っていると思います。大学院では研究室に籠りっきりで全く時間がありませんでした。ようやく最近になって時間が取れるようになって、ランニングから始めています。あと、休日は子どもと一緒に楽しく遊んでます。

―今後の展望について教えてください。

とくに展望はありませんが(笑)、同じ志をもつスタッフとともに、楽しく働ける歯科医院にしたいと思っています。今、とてもいい雰囲気なんです。患者様とのコミュニケーションを大切にした温かな歯科医院になっていると思います。一生懸命働いてくれているスタッフにホント感謝です。目の前にあることをひとつひとつ全力でこなし、それが繋がって、道が開けていけばいいなと思っています。それと、歯のことで困っている方々のご相談にはできるだけのりたいと思っています。現在もメール、facebookを通じて、「セカンドオピニオン」として相談を受けています。これからも、そういう方々の手助けができればいいなと思います。