インプラント 歯根が折れた場合 (都内港区内幸町新橋虎ノ門日比谷霞ヶ関歯科歯医者)


当院でメンテナンス中の患者様の1症例です。インプラントの前後の失活歯(根管治療済みの歯をいいます)が折れ、抜歯と同時にインプラントを埋入する「抜歯即時インプラント手術」を行うこととなりました。

なぜ、抜歯せざる得ないのでしょうか?どのような場合に抜歯となるのでしょうか?

ここに一つの論文があります。Axelssonらは、彼らの30年にも及ぶ長期メンテナンスの報告を精査した結果、定期的なメンテナンスが、むし歯と歯周病を予防し、歯の予後を高める可能性を明らかにしています。

同時に、メンテナンス中の抜歯理由を調べた結果では、むし歯が12歯、歯周病が9歯なのに対して、歯根破折が108歯と約10倍に及んでいることを明らかにしています。

メンテナンス中の患者様の抜歯となる理由

1位 歯根破折 108(歯)
2位 根管治療 24
3位 歯根吸収 12
4位 むし歯 12
5位 外傷 8
6位 歯周病 9

この結果より、歯根破折(根管治療しているいないに関わらず)と根管治療が上手くいかない症例が、抜歯の最たる理由となりえることが分かります。

また、次のような論文があります。根管治療を行った歯を「失活歯」、神経のある歯を「生活歯」といいますが、生活歯と失活歯が抜歯となるリスクを比較した論文です。
つまり、根管治療した歯が、抜歯となる可能性を示唆した論文といえます。
前歯を根管治療した症例では、していない症例に比べ、1.8倍抜歯になる可能性が高く、奥歯では、実に7.4倍にもなるとのことを この論文は示唆しています。

当院ではインプラント治療をする前に、そしてインプラント治療にならないように、
① 予防
② 神経を抜かない、残す治療
③ マイクロスコープ根管治療
④ 残存歯質を残した補綴
⇒セラミックポストアンレー
⑤ ファイバーコアの装着
⑥ かみあわせ
⑦ 歯根端切除術

それでもダメならば抜歯が最適な治療であり、抜歯後の治療法としては、インプラント治療が最適、最善と考えています。


上動画は、手術後1週間の口内の状態です。

本症例は、抜歯と同時にインプラントを埋入し、失った周囲歯槽骨を再生するGBR法を適用しました。術後5日間は多少の腫れが生じますが、痛みは左程ではありません。腫れは「血液の集まり」であり、その血液が創部を治し、周囲歯槽骨を作り上げます。とても大切な反応が「腫れ」です。なくてはならない生体反応といえるでしょう。

インプラントが歯槽骨に結合する2か月間、この仮歯を使用して頂きます。御食事に困ることはありません。

かみしめの癖のある患者様、かみあわせに問題のある患者様は、歯に対する物理的負担が強く、神経を抜いた歯(根管治療済みの歯)は、経年的に歯根破折の危険性が高まります。噛む力を支え切れないために歯根が折れるのです。

抜歯した際、残っている両隣の歯を削りかぶせるブリッジでは、3本分を2本で支えることになります。入れ歯では残っている歯に引っ掛けて使用します。

残っている歯に負担をかける入れ歯やブリッジを治療法として選択するか?または残っている歯を助けるインプラント治療を選択するか?十分ご相談の上、治療法を選択したいものです。