むし歯になると、なぜ歯を削って治療をするのか?また、むし歯が深いと、なぜ歯の神経を取る抜く根管治療が必要なのかをご存知ですか?
今回の動画では、むし歯治療について簡単に分かり易く解説させていただきます
この動画をご覧頂くことで、歯の治療でお困りの方にお役にたてれば嬉しい限りです
その上で、詳しくは、最寄りのそして近隣の歯科医院にご相談頂ければ幸いです
よろしくお願いします
むし歯治療は、歯医者さんで行う治療の1つ
大きく分けると歯医者さんでは3つの治療を行っています
それは、むし歯、歯周病、そして噛み合わせです
むし歯と歯周病は、唾液中に存在する細菌の感染症です。
この2つは感染を取ってあげれば治ります。
上下の歯の接触、上あごと下あごそして頭蓋との位置関係、歯並び、姿勢、生活習慣、ストレスなどが関与するのが「かみあわせ」です。
今回はそのうちの「むし歯治療」についてです
まずは皆さんもご存知のことかもしれませんが基本的なことからご案内させていただきます
歯は3層構造です。外側からエナメル質、象牙質、神経です。
この歯が、骨に支えられています
その上に2~3mmほどの厚みの歯茎が付いています
この歯が溶けてなくなるのがむし歯
歯を支えている歯茎が腫れて骨が溶けてなくなるのが歯周病、歯槽膿漏です
この2つとも、細菌の感染症ですが、その細菌は、唾液の中に存在します
唾液中に存在するむし歯の菌が歯を溶かしながら、歯の内部にまで感染を拡げていく病気
これがむし歯という病気です。
これは1965年、kakehashi先生の研究で明らかとなっています
細菌の感染症であるため、放っておいても治りません。
感染を削り取れば、治ります。
取り残してしまうと、治りません。
放置すれば感染は進行します。
むし歯の大きさ、深さによって、感じる症状、病状そして治療法は異なります
こちらの表をご覧下さい
むし歯が表層のエナメル質に限っている場合、つまり浅い時はしみたり痛んだりすることはありません
2層目、象牙質に至ると冷たいもの甘いものが染みるようになります。
神経に近く深くなってくると冷たい物で染みることが多くなり、神経が一時的にズキっと炎症を起こすことがあります
これを可逆性の歯髄炎といいます
こんな病状では、神経を薬で保護して凍みないようにしてから詰めて治します。
これを間接覆髄法といいます。
神経のことを歯髄といいますが、その歯髄を覆って治すので、覆髄法といいます
さらにむし歯が深くて、神経に達していれば、冷たいものが強く凍みて痛みます。
むし歯を削り取ることで、神経に達し、神経が露出することを露髄といいます
こんな場合は、直接、神経に薬を付けて治します。これを直接覆髄法といいます。
むし歯を取ることで、神経に達してしまうような症例では、
つまりこの表の赤い部分では、その進行状態によって
さらにさらに深く進行すると、神経が炎症を起こして治らない、神経が死んでしまうこともあります。この場合は、炎症を起こした神経や壊死した神経のみ取り除き、部分的に健康な神経を残します。これを部分断髄法といいます。
もっと深くにまで進行してしまうと、流石に神経を残すのは難しい。
こんな時は、徹底して感染を取り除くべく、感染した神経を取る・抜く治療といわれる「根管治療」が必要となります
つまり、むし歯の進行度合い、感染の深さで、適切な治療法が決まります
むし歯が神経に達しているからといって、必ず神経を取る抜く必要はないということです
いずれにしても、感染を徹底的に取り除くこと、これがむし歯治療の最重要ミッションです
ただ、むし歯の細菌は0.5~1ミクロン、人間の目で認識できるのは100~200ミクロンが限界だといわれています。つまり細菌の感染は肉眼では全く見ることが出来ません。
また、「肉眼で見ることを原則とする」従来のむし歯治療の考え方では、細菌感染により一旦生じた歯の神経の炎症、つまり「歯髄炎」は、『すぐに神経全体に広がり、その炎症は治まることなく、じきに歯の神経が死んでしまう』と考えられていました。
私も20年以上前の歯科大生の頃はそのように教わった記憶があります。
そのために、むし歯が神経に近い時は、神経を取る抜く根管治療が行われていました
歯科医療は日進月歩です。現在では、組織学的研究の蓄積によって、歯の神経に対する細菌の感染は、『すぐに』ではなく『徐々』に進行することが明らかにされています。むし歯が神経に達しているからといって、すぐに根管治療?とはならない場合があります
そういった際どい神経に近いむし歯治療を受ける前に、または受けた際、ぜひこちらの表をご活用ください
現在抱える症状から、ご自身の歯がどんな状況にあるのか?それに対する適切な打開策・治療法は何かについて表にまとめました!コメント欄、概要欄に添付します!ご活用下さい!
ではむし歯が神経近くまで進行している時、この神経の炎症「歯髄炎」がいつ始まるのか?ここがポイントです
これは、2層目の健康な象牙質が残り1.1mm~1.5mm。
つまり、神経まで残り1.1~1.5mmまでむし歯が近づいている時、これがポイントです
世界的権威のRicucci先生の文献では、むし歯が、歯の神経まであと1.1~1.5mmまで及んでいる時、『すでに』神経に炎症の兆しが認められる(=歯髄炎)という内容を病理組織切片を根拠として証明しています。
ここまでむし歯が進行すると、症状はなくとも感染は深く進行し、根管治療が必要となる場合があるということです。
これは象牙質が細い管状の構造物であることから、その細管内を伝って、細菌が感染していることを意味しています。
でも、この状況は、目で見ても分かりません。レントゲンではザクっと分かる感じ。正確に診査するならCTでしょう
レントゲンは世界地図、配置は分かりますが、像が重なり不明瞭、実際の寸法は分かりません
CTはマイクロ単位で実寸計測できるのと、像が重なることがありません
目で見て分からないからといっても、ベストを尽くすことをあきらめてはいけません
拡大鏡ルーペやマイクロスコープがむし歯治療には効果的です
神経まで残り1.1~1.5mmまでむし歯が近づいている時
これはCTで診れば明らかです
このときこそ徹底的なむし歯治療が必要となります
ただ、ズキズキ、ジーンとした症状の歯髄炎、つまり歯の神経の炎症は、「細菌感染つまりむし歯」だけが原因では無い場合もあります。
これは蚊に刺された時、皮膚が赤く腫れることに例えると分かり易いでしょう。
蚊の唾液が体内に注入され、それを異物と感じ、アレルギー反応が生じ、皮膚は炎症を起こし、赤く腫れます。
こういった皮膚の腫れる、つまり炎症は、「蚊に刺される」だけでなく、「叩く」「冷たい」「熱い」などの物理的刺激、温度刺激でも起こります。
皮膚を叩けば腫れるように、歯も叩けば痛みます。歯ぎしり噛みしめ食いしばりがそれです。
冷たければ、凍傷に、熱すぎれば火傷します
冷温刺激が慢性的に続けば、歯の神経も炎症を起こすことがあるようです
歯が健康であれば、多少熱くても冷たくても大丈夫でしょう。
でも、むし歯が神経に深い、熱の伝わりの良い金属性の詰め物が深くまで装着されている、歯ぎしり・食いしばりで歯の表面のエナメル質が薄くなっている、欠けている、ヒビが入っているような患者様では、その感覚が敏感になり、より染みるように感じるようです。
このように、細菌感染、くいしばりや慢性的な温度刺激などによって、歯の神経は炎症を起こしてしまいます。その炎症つまり歯髄炎が治まらなければ、根管治療が必要です。
先ほどの表をご参照頂くとともに、ぜひ近隣の歯科医院でご相談ください
むし歯は細菌の感染症、その細菌を徹底的に取り除かなければ治りません。
むし歯は放置してはいけません。
歯に感染した細菌を取り除くには、その細菌が溶かした「むし歯」を徹底的に削り取ること!現時点では、これが最善で最高の対処法です。
見つけたら即削り取る。様子を見れば見る程、むし歯は進行します。進行すればするほど、削り取る量は多くなります。つまりは、間接覆髄、直接覆髄、部分断髄、歯頚部断髄、そして根管治療という具合に歯を削り取る量が多くならざる得ないんです。
早く治療した方が健全な歯、健全な神経が、より残ります。
ぜひ定期検診を欠かさずに、ご担当の歯科医師に歯科衛生士にみてもらいましょう
定期検診につきましてはこちらの動画をぜひご活用下さいね
こんなご質問を頂きます
「でも削ると歯が弱くなりませんか?」
「削るデメリットはありませんか?」
おっしゃる通りです
歯は削らない方がイイ
健全な部分は残し、むし歯は徹底的に削った方がいいでしょう
そうすれば削るのはむし歯のみ
歯が弱くなることもない、削るデメリットもなくなります
そんなときにはCTやマイクロスコープ、拡大鏡ルーペやラバーダムといった治療器材、または科学的根拠の多いMTAという薬剤が効果を発揮します
ぜひ歯科医院を選ぶ際のひとつの判断基準としてご活用下さい