『ファイル、リーマーなどを根管内で折ったことのない歯科医は根管治療をあまりしていないのである』 (現代歯内療法学の父 Dr.Louis I. Grossman)
根管治療の聖書にもこんな言葉があるように、根管治療中に、根管内の清掃器具であるステンレススチール製の「ファイル」(極細のやすりのような器具)が折れてしまい、根管内に残ったままとなっている症例はしばしば認められます。
ファイルの破折は、症例全体の2~6%で生じると報告する調査もあり、部位別の発生頻度の調査がペンシルバニア大学にて報告されています。
このような場合、どのようにすればいいでしょうか?
根管治療中に使用するNi-Tiファイルは、折れづらい器具ではありますが、金属疲労や食い込みによるねじれ破折により折れてしまうことがあります。
また、複雑な根管形態を有する根管を治療する際に生じやすい(樋状根、根管の分岐、石灰化)という報告もあります。
では、ファイルが破折した場合、している場合、必ず除去しなくていけないのだろうか?
これにはいくつかの判断要素がある。
1.根管内の感染程度
2.破折のタイミング
3.破折位置
4.治療環境 ラバーダム マイクロスコープはあるか?
5.術者のスキル
1,2はファイル除去の必要性について、
3-5はその難易度の評価として判断に用いています。
そこに、除去を行った場合のリスクと得られる予後の良しあしを天秤にかけ、患者様と十分に話し合い、治療法の決定を行うべきであろうと考えられています。
宮崎歯科医院では、破折ファイルへの対応方法として、症例に応じて、次の選択肢で対応しています。
1.経過観察
ファイル除去に伴うリスクを抱えてまで除去を試みるよりも経過観察を行う方が有益なこともある。
2. マイクロスコープによる除去
ゲーツグリデンドリルと超音波チップにより除去する方法。
根管内の削除量が少なく、予後が良好になる可能性があるが、マイクロスコープにて確認できない根尖付近のファイルは除去不可能である。
3.外科的除去
歯根端切除による外科的手術により、破折ファイルごと歯根を部分除去する。
ファイルが破折した症例に出会ったとき、なぜファイルが破折するのか、発生しやすい時、部位は?破折した際に、除去が必要なのか?などを文献などのデータをもとに十分に精査し、適切な処置を選択するよう心がけています。