歯根端切除術はなぜ必要なのでしょうか?
(歯根端切除術の手順についてはこちらを)
通常の根管治療で効果を示さない場合、歯根端切除術が必要となります。以前はこのような考え方でしたが、現在ではCT、マイクロスコープなどの最新機器により、術前にその必要性の有無を精査・診断することが可能です。
上写真は上顎第一大臼歯の近心頬側根の状態です。
麻酔下により歯肉を剥離すると歯槽骨を見ることが出来ます。この写真では、3歯根あるうちの1歯根が骨外に露出した状態(黄色矢印)。その歯根にはバイオフィルムという「バクテリアの感染物」が認められます。この写真は、バクテリアが歯の内部を進行し、そのまま歯の外部へと感染を拡大していることを示しています。
上写真をできるだけわかり易く図式化したのが下の図となります。
このような状態では、通常の根管治療のアプローチでは感染源を除去することは不可能です。
通常は右図のように、歯の上部から細いファイル(ヤスリ)を用いて削り取り、薬剤を使用して滅菌消毒します。
上写真のような症例では通常の根管治療では治癒は難しいといえるのです。このような症例は、術前にCTを撮影することですぐに診断することが可能です。
そのため、「治るかどうかわかりませんが、やってみましょうか!!?」という治療は当院ではありません。
UCLA大学歯学部(University of California Los Angeles School of Dentistry)の卒後教育である根管治療プログラム(Endodontic Mentorship Program)では現在、根管治療・歯根端切除術(外科)について上記の見解を示しています。
(根管治療の必要とする歯の)「問題は、歯の内側にあるのではなく、外側にある」
「こうした症例は決して少なくない」
「しっかりとしたエンド(根管治療)をやった」イコール「病変は必ず治ってくれる」というわけでは、必ずしもない。
「最善を尽くしたエンド(根管治療)が必ずうまくいくとは限らない」
「さまざまな理由で上手くいかないというのがエンドである。という側面がエンドにはある」
「こうした場合、問題を解決するには外科に頼らざる得ない」
日本の15年先をいく米国根管治療最前線の見解は以下の通りです。
「現在では、エンド(根管治療)にだけ頼るのではなく、その後の治療を見据えた考え方が必要である。それにはエンド―インプラントロジーの考え方が必要。徹底した根管治療(エンド)で残せなかった場合は、すみやかにインプラントできるような環境づくりを口腔内につくっておくことが大切。」
当院では術前にCTを撮影し、徹底した根管治療を行います。その上で治癒を目指すべく、またその後に生ずる可能性のあるインプラント治療に備え、歯根端切除術を行い、患者さまの健康に寄与すべく日々精進しております。