歯の神経を残す治療《なぜ歯医者さんは根管治療をするのか?》

チョット凍みるけど、それほど痛みは感じていない状態で、歯医者さんに行って治療を受けました。すると、

「むし歯が深いね~、歯の神経、取った方がいいね」

「銀歯をとったらむし歯になってたよ。歯の神経にまでいってるから神経を取るよ」

「むし歯取ったら、歯の神経に達してたから根管治療しておいたよ」

おいおい、待て待てと、これ納得できます?

むし歯が深くても、神経に近かったとしても、歯の神経、取らずに、抜かずに残したいですよね!?それほど症状もないのに、なんでそれ出来ないの?って感じませんか?

このように、むし歯が歯の神経に近い時、達している時、歯科医院で当たり前のように行われている根管治療。

根管治療は、歯の神経を取る・抜く治療といわれています。

むし歯は、唾液中に存在する細菌が、歯に感染し、歯を溶かしながら、歯の内部に感染を拡げていく病気です。つまりむし歯治療は、その細菌感染を取り除く治療です。

確かに、歯の神経にまでむし歯が達していたら、感染した歯の神経を取る治療が必要となるのは分からないでもありませんよね。でもそれって、本当に正しいんでしょうか?

むし歯が歯の神経に近いから、むし歯を取ったら歯の神経に達していたからと言って、本当に、歯の神経を全部取り去る「根管治療」、しなきゃいけないんでしょうか?

まずはこの動画の結論からいきましょう!

むし歯は唾液中に存在する細菌の感染症です、これは1965年、kakehashi先生の研究で明らかです。

患者様は皆、歯の神経を残したいと願っているはず。皆さん、どうですか?

患者様の希望、それは医療の本質です。

この本質に従い、徹底的に細菌感染を取り除けば、歯の神経は残せます!

むし歯が歯の神経に近いからといって、むし歯が歯の神経に達しているからといって歯の神経を取る必要はないんです。繰り返します、歯の神経は残せます。抜かないでもいいんです。

ではなぜ、歯科医師は、歯の神経に近い深いむし歯の場合、根管治療をすすめるのでしょうか?それには皆さんの知らない歯科治療の現実があるんです。

1センチにも満たない歯の内部のむし歯を、約50センチ離れた位置から見て、「肉眼を頼りに」削り取る事、できるでしょうか?。ほぼ、不可能です。(こちらの動画で詳しく解説!)

むし歯の細菌の大きさは、0.5~1μmです。人間の目で見える大きさの限界(分解能)は0.1mm~0.2mmつまり100ミクロンから200ミクロンです。これ以下は、どんなに一生懸命に見たとしても判別できないそうです。つまり肉眼では全く見えていないんです。

我々歯科医師は、細菌が感染、溶かした部分を齲蝕検知液で染色してむし歯を判別します。微かに染色されたむし歯を肉眼で判別する、、、感染を徹底的に取り除くという観点では不十分と言わざる得ないでしょう。

そんな治療中に、治療している歯に唾液が接触したらどうなるでしょうか?

唾液中に存在する細菌が歯に感染、その感染を取り除いている最中に、治療している歯に、唾液がガバガバガバガバと流れ込む。何をやっているのか、分からないですよね。

そんな現実を歯科医師は皆、知っているのではないでしょうか?残ってしまった細菌は、患者様の免疫で、ブラッシングで、何とかなるんじゃなかという淡い期待をもっているんじゃないでしょうか?

私はそんな期待全くありません、だから肉眼では絶対に治療しません、徹底的にむし歯を削りとっていきます。

なので、歯の神経に近いむし歯、歯の神経に達しているむし歯では「100%感染を取り切る事は肉眼では不可能」「肉眼では感染が残る可能性がある」「治療中に感染してしまう」と判断し、歯の神経を取る治療、根管治療を行っている歯科医師が多いように感じています。

疑わしきは罰する論理でしょう。しかしこの前提には、「肉眼ではその感染程度を判定できない」とする「あきらめ、妥協の論理」が見え隠れすると共に、それ以上に、歯科医師の先生の優しさがあるように私は感じています。

「できるだけ、やり直し治療にならないように。。。1回で治療が済むように」と。

我々歯科医師にとっても、患者様にとっても、「やり直し治療」は辛いものです。

歯科医師が良かれと思って歯の神経を残す治療を必死でおこなったとしても、結局、根管治療になってしまう。。。そんなことならば、はじめから根管治療した方が患者様に迷惑がかからないのではないか、、、そんな優しさから、根管治療をご決断されている先生、沢山いらっしゃるようです。

私がこうように感じるようになった根拠は、Youtubeで動画を配信するようになってから、このようなお考えを持つ全国の歯科医師の先生方より、多数コメント、メールを頂くようになったからです。

確かに、成功率では根管治療に軍配が上がります。当院では根管治療の成功率が9割を超えているのに対して、歯の神経を残す治療は7割ほど。3割はその後、根管治療となっています。

歯の神経、できるなら、残したいですよね!

根管治療の成功率が9割だとしても、「歯の神経を残す」というポジションから見れば、根管治療はたとえ9割でも敗北です。歯の神経を残せる7割の可能性があるならば、チャンレジしますよね!

これにはでも、マイクロスコープとラバーダムが必要です。

これまでの常識、当たり前、従来の肉眼による治療法に囚われることなく、この最新機器を装備しつつ、前向きな患者様の希望を叶えるべく果敢にチャレンジする治療。

そこにこそ、医療の本質があるのではないではないかと私は考えます、皆さんはいかがですか?

こんな切なるご希望を叶えるためには、我々歯科医師は、これまでの、当たり前、常識、保険診療の枠に囚われた思考停止のままではいけないでしょう。日々、チャレンジ、研鑽が必要です。

歯科治療に対する価値観は、人それぞれのようです。

不可能かもしれないけれど、歯の神経を残す努力をすることに、治療の意義を見出す患者様もいれば、長期的に見たら、いずれは歯の神経を取る根管治療が必要となるかもしれないけれど、出来る限り、歯の神経を大切にしたい・残す努力をしたい!と希望をもつ患者様もいます。

また、それとは対照的に、何度も何度も、時間・費用・痛みを費やすならば、確定的な根管治療をご希望になる患者様もいらっしゃいます。

皆さんのご希望は様々です。

我々歯科医師は、とくに臨床経験の多い優れた知識と技術をもつ歯科医師は、「長期予後」や「経済性優位性」を重視しがちのように感じます。つまり「やり直しがないこと」「コストパフォーマンスが良い」ということでしょう。

でも患者様にとっては、「治したい!」これが一番の願い・希望ですよね。

患者様の感じている・考えている『苦悩』を解消してもらいたいというのが第一なんです。

病態を治すことは当然あって然るべき。患者様もそれは当然と考えています。

しかし、いきなり歯の神経を取り去る抜髄、根管治療?では「患者様の心が付いていけない」ようです。

その『苦悩』を解消するためにも、歯の神経を“一時”残す治療には、私は、大きな意義を感じています。それがそのまま残ってくれればホント、嬉しいですよね!

病気とは、「病態の病」、「気持ちの気」と書きます。

医療従事者として、病態を治すのは当然あって然るべきでしょう。当院では、病気の気、つまり「患者様の心持ち」にまで配慮できる治療を目指せるよう日々の臨床にスタッフ一同で取り組んでいます!

笑い声のあふれる歯科医院、これが目標です。

たとえ後に根管治療が必要になったとしても、自分の生涯において「歯の神経がある期間が長くなった」ことに目を向け、喜びを見出すことに全力を尽くすことが医療の本質であると考えています。

そのためには、この「歯の神経を残す治療」という治療オプションは、患者様がその点について理解されていれば、「気を和らげる」優しい治療法であると強く感じています。

私は根管治療の症例、大変多く拝見しております。同時に、歯の神経を残す治療もそれ以上に拝見しています。

抜歯せずに済んだ根管治療症例も嬉しいですが、根管治療せずに済んだ「歯の神経を残す治療症例」は私が嬉しいばかりなく、患者様にはホントに喜んでもらえます。

この動画をご覧頂いている皆さんには、歯の神経を残す治療があるということを、ぜひ知って頂き、歯でお困りになっている皆さんへ拡散して頂ければ、本当に嬉しいです。

今回の治療動画は、歯の神経を残す治療、実際の様子です。

患者様は以前に入れたセラミックインレーの歯が凍みるということで来院されました。

原因はかみしめです。歯が割れてしまっており、そのヒビから歯の神経にまでむし歯が進行していました。

マイクロスコープとラバーダムそして、優れた薬剤MTAを使用して、歯の神経を残しています!

いっつも前置きが長すぎます(笑)、それでは歯の神経を残す治療、実際の様子、いきましょう!

宮﨑歯科医院 Youtubeチャンネル