以前に治療したセラミックインレーの違和感を主訴に来院された患者様。
「しみる」ことで治療となり、セラミックインレーを装着したそうです。
その後から、しみる、違和感、痛みがあり、担当医に相談されたそうですが、むし歯が深かったので、神経の治療が必要となるかも?と回答をいただき、様子を見ていたそうです。お仕事などもお忙しく、違和感を抱えたまま様子をみていたところ、痛みが気になり始めたため当院を受診されました。
本動画は、その際の治療の様子です。
術前のレントゲン画像です。右にわかりやすく図解しています。
レントゲン画像は、硬いものが白く、軟らかいものが黒く写し出されます。歯は「硬い」ため白く、セラミックインレーも白く写ります。
歯の内部にある神経は軟組織であるため、黒く写し出されます。
右黄色の部分が覆髄材です。
覆髄材とは。神経(=赤い部分)近くまで深く進行しているとき、神経を保護するために敷く薬剤です。
以前のむし歯治療が深く進行していたことが推察されます。
むし歯は唾液中に存在する細菌の感染症です。象牙質に至る深いむし歯治療や根管治療(神経の治療、根っこの治療)では、治療中の唾液の接触は、再感染の機会を与えかねないため、当院ではラバーダムを装着し、治療に臨んでいます。
また、歯面に付着した唾液も術前に洗浄消毒した上で治療に臨みます。
① 深いむし歯治療を経験されている。
② 現在何もせずとも痛みがある。
この2点より、2つの診断名が考えられます。
・歯髄壊死
・不可逆性歯髄炎
上記症例の場合は、「根管治療」が必要となります。
歯の神経は、細菌の感染があると、まず炎症を起こします。これを「歯髄炎」といいます。これは徐々に進行するため、一時的・部分的なこともあります。
早期に感染を取り除くことで、その炎症は治まり、神経を残すことが可能です。この炎症を「可逆性の歯髄炎」といいます。
しかし、感染が拡大することで、その炎症は強くなり、神経自らの治癒能力では回復できない状態となります。これを「不可逆性の歯髄炎」といいます。
これを過ぎると神経は徐々に壊死し、その感染は歯のみならず歯を支える歯周組織(歯槽骨や歯ぐき)へ拡大するのです。これを根尖性歯周炎といいます。
むし歯治療は、その感染拡大を予防すべく、感染部位を徹底的に取り除くことにあります。これには、マイクロスコープやラバーダムが有効といえるのです。
本症例は、不可逆性歯髄炎でした。
詳細は、動画をごらんください。
原因は覆髄材の下、茶褐色のむし歯が疑われますが、今となっては分かりません。
これ以上の感染拡大をしないよう、歯の内部の感染を除去します。
むし歯治療や根管治療は、感染を取り除くことが目的です。
感染を取り除けば治癒します。当院では、可能な限り1回の治療時間を長く、少ない回数で治療を行うようにしています。