このマイクロスコープを活用することで歯科治療が大きく変わりました。
そのひとつに、歯の神経を取らずに残せる症例が多くなりました。
これまでは、1cmにも満たない歯の内部を”肉眼”でみて治療をしていました。
目で見て明らかに分かる”むし歯”は取り去ることができました。
しかし、肉眼では限界があるため、厳密には、むし歯を取り残している場合もあり、完治させることが非常に難しいこともありました。
「ラバーダムを装着しないで」治療に臨むと、治療中に歯に唾液が接触してしまいます。
むし歯を取り去るのがむし歯治療です。
その最中に唾液が治療している歯に接触することは、治癒を阻害するばかりでなく、再感染の機会を与えかねません。
「肉眼に頼った」神経に近い・深いむし歯治療では、以下の点で「細菌感染を取り除けているか?」の疑問を払しょくできません。
・むし歯の有無を”厳密に”精査、判別し難い
・治療中に感染させかねない
・神経の病状を診査できない(マイクロスコープによる神経の診査方法とは?)
そのため、確実に感染を取り去る可能性の高い「根管治療」が選択されてきました。
これが、「従来の治療(肉眼による治療)」です。
決して間違いではなく、更なる感染拡大を予防する治療法として確実性の高い治療法でした。
・肉眼で治療している歯科医師
・拡大鏡ルーペ(10倍以下の拡大率)使用の歯科医師
・マイクロスコープを使用していたとしても、神経を残す「治療コンセプト」「診査診断基準」「症例数」を持たない歯科医師
これらの治療環境にある歯科医師は、深いむし歯治療の際、従来の方法である根管治療が第一選択の治療法となります。
・マイクロスコープを使用していない医院
・ラバーダムを装着しない医院
・神経を残す治療の適切な治療コンセプトがない医院
では、現在でもこの考え方に基づき、治療しているのが現状といえるでしょう。
マイクロスコープを活用することで、どこまで感染しているのか?を”従来よりも”明確に診査し、治療することができるようになりました。
深いむし歯治療でも、歯の神経を取らずに残せるようになっています。
※ 深いむし歯の時、神経を残せるか否か?その症状からチェックする方法はこちらをご参照ください。
従来の治療法とマイクロスコープを活用した治療の違いは、黄色の点線の症例で顕著です。
上表は、左から右へ行くに従いむし歯が深く進行している図となっています。
左から、健康な歯、浅いむし歯、深いむし歯、神経に達しているむし歯、神経が炎症を起こし治まらない状態、感染により神経が死んでしまっている状態(=歯髄壊死)です。
左側の浅いむし歯の治療では、”従来”と”マイクロ”に違いはありません。
両者ともにむし歯を削り、神経を残し、インレーなどの詰め物をかぶせれば治るでしょう。
同様に、右側2つは神経を残せる状況になく、根管治療が必要な歯となります。適切な根管治療が望まれる症例です。
”従来”と”マイクロ”の違いがあるのは、「深いむし歯」「神経に達している」むし歯の症例です。
これらの症例の場合(黄色の点線の症例)、マイクロスコープとラバーダム、MTA。この3つのポイントを押さえるだけで、神経を取らずに残せるようになっています。
マイクロスコープがあれば良い、と言う訳ではありません。
素晴らしい調理器具があるからといって、一流シェフがつくるような美味しいご馳走ができるとは限りません。
最新機器を生かすも殺すも使う者の知識と技術によるでしょう。
マイクロスコープを活用することで、いままでできなかったことが出来るようになってきた歯科治療。
マイクロスコープの普及率は、未だ4%ほどとのこと。更なる普及が望まれています。
マイクロスコープ精密歯科治療は、歯科医院選びの1つの基準となってきているようです。