右上一番奥(7番目、第2大臼歯)に痛みがあり、当院を受診されました。レントゲンをみると、根管治療が上手くいっていない様子。無痛麻酔あとにラバーダムを装着し、かぶせものと土台を除去しました。除去後の根管内写真が上真ん中の写真です。基本この歯は3根管、つまり3つの穴が明瞭に見えるはず。2つの根管は根管治療をした跡がありましたが、感染が認められました。1つの根管は未処置。見えずらいこと、届きづらいこともあったのでしょうか?その未処置の根管からは排膿が認められました。
CTを撮影すると、この歯の根尖(根の先)に大きな病巣が認められました。その病巣は上顎洞にまで膨らみ、膿が溜まってしまっていました。本症例のような場合、2つの神経は取り除かれていますが、1つは未処置のため、歯に感覚が残っていることがあります。本症例では、「熱いものがしみる」という症状がありました。神経を取り除いたとしても、それが適切になされていなければ、このような症状が残ることがあります。また、根尖に病巣を抱えていることから、血圧の上がるようなことや疲労により、心臓の鼓動に一致したズキズキとした痛みも伴うことがあります。早々の治療が必要な状況です。
更に根管内の感染を除去すべく、根管内を清掃すると、口蓋根(赤矢印)より多量の出血と排膿が認められました。5秒ほどの間に、膿と出血で根管内がみるみる満たされる状態です。
本症例では、未処置の1根管は神経が生きている状態(①)、1つの根管は処置されていましたが不十分、もう1つの根管(口蓋根②)も処置が不十分で、それを原因に根尖に病巣をつくり、排膿出血していました。熱いものがしみるの原因は①、噛むと痛い・なにもしなくてもズキズキするは②が原因です。診断名は、「2つの根管が過去に根管治療をした既往の在る歯でその治療が不十分、1つの根管が歯髄壊死。+慢性根尖膿瘍」といったところでしょう。
根管内をマイクロスコープで観察しつつ、清掃します。患者さまには鎮痛消炎剤とともに、抗生物質+腫れ止めを服用頂き、さらに炎症を治めるようにします。この処置で1週間ほどで症状は緩解します。