むし歯は『歯の硬さ』で調べる?

いつも勉強になります。

丁寧な先生の治療を見ているとこちらまでやった気になってしまいそうで笑

こういうきれいな治療したいという明確なゴールとしてわかりやすいので先生の治療を日々の診療の目標としています。

う蝕除去について質問なのですが、従来の充填物としてアマルガムがありますが 除去する際、う蝕検知液には染まらないが、黒く変色はしていて、エキスカではカリカリっとしている 今回の動画でもエキスカで硬さを確認するシーンがありました。

硬さに先生の中で参考にしていることやう蝕除去時の注意点などありました是非お教えいただければ幸いです。

コメントありがとうございます。
歯科治療に限らず、事を為すには「良いイメージ」が大切でしょう。
ぜひご活用頂ければ幸いです。

このチャンネルをご覧頂いている患者様も、この回答コメントをご覧になるかもしれません。
そんな方々へも分かり易いように回答させて頂きます。
先生にはご存じの内容かもしれません。その点ご理解頂ければ幸いです。

むし歯を削り取る(齲蝕除去)、つまり細菌感染した部位を除去すること、これが歯科医師の責務であり絶対なる達成目標でしょう。

浅ければ、”歯の神経を残す治療”(間接、直接覆髄、部分断髄、歯頚部断髄)、さらに深ければ根管治療に至ります。
※以下のリンクで歯頚部断髄法をご説明するにあたり、「歯の神経を残す治療」とはどんなものかを動画で解説しております
https://www.youtube.com/watch?v=Ukmi7sQBdUc&t=155s

この治療は別々の独立したの治療法ではなく、「むし歯を取り除く中での一連の流れ」でしょう。

そのため、むし歯が歯の神経に深い場合、患者さまには「間接覆髄法ですね!」「部分断髄ですね」「根管治療ですね」といった説明はナンセンス。

実際に治療した上での『結果』として、直接覆髄で、または部分断髄で、または根管治療でフィニッシュしたという具合です。
その点、患者様への事前の説明がとてもとても大切です。

頂いたご質問に回答させて頂きます。

「齲蝕検知液には染まらないが、黒く変色・着色している部分」に対してどのように治療するか?どのようしてむし歯を削り取っていくのか?
「むし歯の硬さを基準に削り取る?」とはどのような基準なのか?というご質問かと思います。

お時間があれば、まずは以下のリンクをご参照下さい。

当院の歯の神経を残す治療について説明させて頂いておりますサイトです。

患者様にとってはやや難解な部分もありますが(笑)、歯科医師の先生であればご理解頂ける内容かと思います(笑) 
https://miyazaki-dentalclinic.com/21762

むし歯を削り取るには、先生もご存じの通り、2つの診査診断基準がベーシックなものでしょう。
「齲蝕検知液による染色」
「硬さによる診査」
この2つです。

当院ではむし歯を削り取る際、齲蝕検知液(カリエスチェック)を使用して、むし歯を染色し、徹底的に削り取ります。
https://miyazaki-dentalclinic.com/22122

しかし、メタルタトゥーやむし歯により変色・着色部分は齲蝕検知液で染色できません。

その際は、「歯の硬さ」をもって、むし歯か否かを判定し治療に臨んでいます。

但し、この判定の前に、「術前の問診」が非常に大切です。

この点につきましては、以下の動画「歯頚部断髄法」が参考になるかと思います。
ぜひご覧下さい。
https://miyazaki-dentalclinic.com/27455

また術前の症状から歯の神経は残せるか否かを判定するチェック表もございます。ご活用下さい。

この問診をもとに、むし歯が、つまりは細菌感染がどの程度進行しているのか?
つまりは、どこまで削り取って確認する必要があるのか?が決まります。

この点を配慮せずに「齲蝕検知液」と「硬さ」だけでむし歯を削り取っても『片手落ちの治療』でしょう。ぜひご活用下さい。
https://miyazaki-dentalclinic.com/22012

当院では、齲蝕検知液で染色し、原則、染色された部分はすべて削り取ります。
これにはマイクロスコープとラバーダムは必須です。

その後、染色されていない歯質の変色・着色部分をマイクロエキスカを使用して、健全な象牙質部分を触知し、正常な象牙質の硬さを確認した上で、そこより『軟らかく感じる部分あるいは剥がれる部分』は、再度削り取っています。

以下に「むし歯(齲蝕)の硬さを基準としたむし歯除去方法」に関する参考文献を添付します。
ご活用下さい。

〇日本歯科保存学会の「齲蝕治療ガイドライン」
http://www.hozon.or.jp/member/publication/guideline/

〇2015年に開催「The International Caries Consensus Collaboration」のガイドライン
「齲蝕除去の指標として【硬さ】が重要であり、湿潤程度や色は付加的な指標である。
軽度から中等度の齲蝕に対しては、ある程度の硬さまで齲蝕を除去すべきである」としている。

※しかし術者(=担当する歯科医師)の感覚によるものであり、その基準には大きなバラつきがあることは否めない。

〇Quintessence Vol.39 No11/2020「ディシジョンツリーで考察する深在性齲蝕における治療選択」辺見浩一先生著より引用抜粋

・選択的齲蝕除去としてのステップワイズエキスカベーション(辺見先生の術式)
(ステップワイズエキスカベーションとは?以下のリンクをご参照下さい)
https://miyazaki-dentalclinic.com/22283

『ステンレス製のラウンドバー(MIステンレスバーハード、MANI)回転数(約1,000-回転)固定、軽い圧で除去される軟化象牙質はすべて除去するという基準でステップワイズエキスカベーションを行う。
ある程度除去できたら、切れ味の良いスプーンエキスカベータ―で象牙質を掻き上げ、ボソボソとした層状にはがれるようであれば、再度ラウンドバーに戻り除去。これを繰り返し行い、スプーンエキスカベーターで剥がれない硬さが確認できれば、色の濃さは指標に大きく取り入れていない。』

〇ヨーロッパ歯内療法学会(ESE)のポジションペーパー(公式見解)では、深在性齲蝕(=歯の神経に近い深いむし歯)における露髄(=歯の神経に達するむし歯で、神経が露出すること)治療では、マイクロスコープの拡大視野下での処置を推奨することが明記。治療環境の整備が必須。

この回答が少しでもお力になれていれば幸いです!

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