歯の神経をとる根管治療(根幹治療)。
その後の治療法として、しばしば提案される治療法が上の図のような方法ではないでしょうか。
むし歯は唾液中に存在する細菌の感染症です。
歯の内部に感染侵攻した細菌を取り除くのがむし歯治療です。
その感染が神経にまで及んでいる場合、感染を取り除くべく、感染した神経を取り除き、もうこれ以上感染を拡げないようにするのが「根管治療」です。
このむし歯を取り除く際、むし歯が多く、削る量が多い症例では、歯の大半を失うため、上の図のような人工歯「クラウン」となります。
メタル製のクラウンは保険診療の適用として使用されていますが、白い歯、セラミック製のクラウンの場合は、下の図のようになります。基本、構造に変わりはありません。
根管治療(根幹治療)後にはその歯を補強するためにも、土台(コア)を云われる“芯棒”を歯根に差し込みます。
その材質にいくつかの種類はありますが、原則、1択、ファイバーコアが適切です。
ファイバーコアの有効性につきましては、以下にリンクを添付致します。ぜひご参考下さい。
https://miyazaki-dentalclinic.com/19117
根管治療後の治療法の説明としては上記の方法が従来の方法であり、この方法を説明されることが多いかと思います。
しかし、この方法では、歯の全周を削り込むため、歯を削る量が多く、将来その歯がもろくなる可能性を大きくしてしまうのも事実です。
ただし、むし歯があって削らざる得ない場合はこの方法が最善です。
もし、むし歯の範囲が狭いにも関わらず、歯の神経を取る根管治療が必要となった場合は、以下の治療法を視野に入れたうえで、根管治療に臨みます。
そうすることで、可能な限り歯を削らずに残す治療、その歯の寿命を長くなる可能性が大幅に高まります。
まず1つは、セラミックポストアンレーです。
セラミックポストアンレーとは、可能な限り削らず、コア(=ポスト)と噛み合わせ部分が一体となってオールセラミックス(e-max)で製作された人工歯です。
この治療法は、USC(University of Southern California)の教授 Pascal Magne(パスカル マニエ)先生が「根管治療後に歯が破折しない(折れない)ようにするための優れた方法」として推奨されている術式です。
科学的根拠を示す論文があり、根管治療後の歯を強固にすることが証明されています。
もう1つは、ファイバーコアを装着後にセラミックアンレーを装着する方法です。
根管治療後にファイバーコアを装着します。
その後、歯を最小限に形と整えるべ削り込み、歯の噛み合わせの部分を部分的に覆う「アンレー」を製作します。
この方法は、クラウンを装着する治療法と比較して、歯を削る量が少なく、その歯の寿命を長くする可能性を秘めた素晴らしい治療術式といえるでしょう。
この方法、私は「アンレー」で製作します。
理由は2つ。
① 根管治療後に歯がかみ合うと治療後の痛みが強く、治癒を阻害する場合がある
② このような、大きなむし歯ではないにも関わらず根管治療に至る症例では、その原因に「かみあわせ」「くいしばり」が関与していることがほとんどである。
これらの原因に対して、以下の対応をするべく、根管治療の際に、噛み合わせを最小限に削り、人工歯で回復しています。
① 痛みを緩和し治癒を促進する
② 人工歯をかぶせることで、かみあわせを改善させる
● 患者様の病状(むし歯の拡がり、かみあわせ)
● 患者様のご希望(白くしたい、長く持たせた)
根管治療後の歯を回復する治療法としては、上の2つのご希望も含め、様々な治療法があります。クラウンだけではありません。
そのため、根管治療を始める前に、そのご希望を知ったうえで治療に臨めると、患者様にとって最善の治療を受けて頂けるかと思います。