日別アーカイブ: 2019年4月30日

歯の神経 抜かない取らない治療 神経死んでいる

無症状だがレントゲンで深いむし歯が推察される下顎第一大臼歯の症例。
本症例では、下顎の第2大臼歯の歯髄壊死により根管治療を行った経緯もあり、疑わしき歯はしっかりと治したいとのご希望を頂き、治療を行うこととなりました。

上動画はラバーダムを装着し、マイクロスコープを用いてむし歯を除去。露髄(⇒歯の内部深くにまでむし歯が進行していたことにより、そのむし歯を除去することで、神経が露出することをいう)したため、歯の神経(=歯髄)を精査した上で、MTAによる直接覆髄法神経を残す治療)を行った際の治療の実際を動画にて説明しております。

根管治療を受けた歯(=神経の治療・根っこの治療を受けた歯、失活歯)は、その強度が経時的に脆く・弱くなります。

その根拠を示す文献が以下の通りです。

〇 根管治療を受けた無髄歯は、咬合力を感知する受容センサーが反応するまでに有髄歯と比べて2.5倍の咬合力が必要とされる(Randow & Glantz 1986 Stanley 1989)。
したがって、無髄歯に咬合力が加わって受容センサーが反応した時は、すでに大きな咬合力が加わってしまった後になることがありうる。

〇根管治療を受けた歯は、歯を保護する機能が低下しているので、歯冠および歯根破折の頻度が高くなる可能性がある(Fussら2001、Lertchirakarnら2003、Mirekuら2010)

そのため、神経を残せるのであれば絶対の残した方がいいでしょう。
従来の考え方である「露髄したら神経は取らなくてはならない」は、昔の考え方です。

これはマイクロスコープが無かった以前の考え方。マイクロスコープにより、むし歯の徹底除去が可能となり、歯髄(=神経)の生死・状況を精査できるようになった今日では、このような従来の考え方・判断基準は古いものといえるでしょう。

当院ではラバーダム・CT・マイクロスコープを用いて神経を残す治療を行います。

但し、細菌感染により歯髄壊死、不可逆性歯髄炎に陥っている症例では、適切に根管治療を行うことが、その治療の寿命を永くすることにつながります。