根管治療専門医の先生より頂きましたご質問に回答させて頂いております。
歯の神経を残す治療の意義について当院の考え方をご説明させて頂いております。
ぜひご一読下さい。
こちらの動画でもコメント失礼します♪
私はエンドメイン(根管治療専門医)なのでVPT(→歯の神経を残す治療法のこと)が年間100症例ほどあります。
こちらの動画でもありました通り、直フク(直接覆髄法)、部分断髄法では中(→根管内部の歯の神経)の壊死状態を判断しきれないですよね…。
そうなると、はじめから全部断髄(→つまりは歯の神経を取る根管治療)した方が、長期予後も良いのかなとも考えてる部分もあります。(もちろん軽度露髄でそこまでしておりませんが…)
良ければ先生のご意見も伺えれば幸いでございます。
初めから歯頸部断髄で考えていれば即日でエンドに踏み切る判断もできるので、患者さんの来院負担も減らせるのも利点かなと思ってます。
もちろん無駄に削るんじゃないか!といえばそこまでなのですが…。
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いつもご覧頂き誠にありがとうございます。
大変意義あるご質問、私見で恐縮ではございますが、回答させて頂きます。
よろしくお願い致します。
ご質問頂いた内容を私なりにではございますがまとめさせて頂きます。
「歯の神経を残す治療には、その成功率において、不確定な部分がある。それによって、再治療つまり、のちに根管治療が必要となってしまうこともある。そのような不確定な部分があるならば、確定的な根管治療に踏み切った方がいいのではないか?その点についてどのように患者様に説明し、理解を求めているのか?」
頂いたご質問は上記のような理解でよろしかったでしょうか?
これについて私見ではございますが回答させて頂きます。
当院には大変多くの患者様が「歯の神経を残したい!」とのご希望を胸にご来院頂きます。
そんな患者様には以下のようなご説明をさせて頂いております。
「神経を残す治療ができるが、その予後に?が生ずる症例」
つまり神経を残す治療をしたけれども、のちに歯の神経が壊死して根管治療をせざる得ない可能性を秘めた症例ということです。
このような患者様の症例では、次のようなご提案、ご説明を「必ず」させて頂いた上で、患者様のご希望を踏まえ、ご同意頂いた上で治療に臨ませて頂いております。
当院での神経を残す治療の「神経生存率」は、現在80%ほどではないかと感じております。これは、20%は、のちに根管治療となっているということです。
原因は以下の通りです。
・かみしめ、くいしばりなどの強い力
・喫煙、食生活などの末梢血流量の不足
・歯の神経を残すには厳しい状況であることを術前に患者様ご了解の上、神経を残す治療を施すも、後日歯髄壊死に至った症例
そのため、患者様には以下のようなご説明をさせて頂いた上で治療に臨んでいます。
1.実際に患部を開け、神経が壊死しているか否か?をマイクロスコープ診査して、神経が生きれいれば「神経を残す治療」、神経が死んでしまっていれば「根管治療」を行うことにご同意を頂き治療に臨む。
→この1の場合は、「マイクロスコープで明らかに神経が壊死していることが分かる」に限ります。つまり歯髄壊死し、歯髄が崩壊し血流はなく、場合によっては空洞化した病状です。
2.実際にマイクロスコープで神経を診査した際、その生死の判別が疑わしい場合、今後歯髄壊死の可能性があったとしても、まずは神経を残す治療を行い経過を観察してみる。
→これは部分断髄症例といえるでしょう。
ただし、その後、歯髄壊死の症状・徴候が認められた場合は、のちに根管治療が必要となることにご同意を頂いた上で治療に臨んでおります。
3.神経が残せるか否かの判定が難しく、結局神経が死んでしまう可能性があるならば、根管治療をご希望される患者様の場合。
→長期海外出張や治療回数、費用に関わるご負担を第一に考えられる患者様がこれに該当するでしょう。
治療に臨む前に、上記3つのパターンの可能性をご説明させて頂いた上で治療に臨んで頂いております。
治療はすべてマイクロスコープで動画記録、携わるスタッフの動きも記録した上で治療に臨んでいます。皆様安心して治療に臨むことができるようです。
治療に対する価値観は、人それぞれのようです。
・無理だとしても、歯の神経を残す努力をすることに意義を見出す患者様
・長期的に見たら、いずれは歯の神経を取る根管治療が必要となるかもしれないけれど、出来る限り、歯の神経を残す治療をしたい!と希望をもつ患者様
・何度も何度も、時間・費用・痛みを費やすならば、確定的な治療をご希望になる患者様
その患者様の価値観によって、
少しでも歯の神経を残したい!
無理だと分かっていてもやってみたい!
そのリスクはご自身で負ったとしても治療にチャレンジしたい!
今後の展望の得やすい根管治療で臨みたい!
皆さんのご希望は様々です。
我々歯科医師は、とくに臨床経験の多い優れた知識と技術をもつ歯科医師は、「長期予後」や「経済性優位性」を重視しがちのように感じております。
当院にご来院頂く患者様から伺うお言葉に、そういった意味合いのコミュニケーションがあったことをひしひしと感じます。
しかし患者様としては、「治したい!」が一番の願いです。
患者さまとしては、その患者様の感じている・考えている『苦悩』を解消してもらいたいというのが第一です。
病態を治すことは当然あって然るべき。患者様もそれを考えています。
しかし、いきなり抜髄、根管治療?では「患者様の心が付いていけない」ように感じます。
その『苦悩』を解消するためにも、歯の神経を“一時”残す治療には、大きな意義を感じております。それがそのまま残ってくれればうれしい限りです。
病気とは、「病態の病」、「気持ちの気」と書きます。
病態を治すのは当然あって然るべきでしょう。当院では、病気の気、つまり「患者様の心持ち」にまで配慮できる治療を目指せるよう日々の臨床に取り組ませて頂いております。
たとえ後に根管治療が必要になったとしても、自分の生涯において「歯の神経がある期間が長くなった」ことに目を向け、喜びを見出すことに全力を尽くすことが医療の本質であると考えております。
そのためには、この「歯の神経を残す治療」という治療オプションは、患者様がその点について理解されていれば、「気を和らげる」優しい治療法であると強く感じております。
この回答がご希望に沿うものであれば幸いです。
先生のような志高い歯科医師が日本全国に広まて頂けると嬉しい限りです。
今後ともよろしくお願いいたします。