再根治(再根管治療)ということは、失活歯だと思うのですが、それでも麻酔するのですか?
歯科衛生士学生で、勉強不足なのですが疑問に思ったので質問しました。
コメントありがとうございます。
大変意義あるご質問です。日本の歯科医療における「根管治療」の術式は、大きく2つに分類されているでしょう。
それについて分かり易く解説致します。ご参考下さい。
むし歯とは唾液中に存在する細菌の感染症です。
歯を溶かしながら、内部へと細菌が感染していくのがむし歯という”病態“です。
つまり、俗にいう、「むし歯」とは、「細菌が歯を溶かした跡」といえるでしょう。
「むし歯」=「細菌が歯を溶かした跡」=それを削り取るのがむし歯治療 と皆さん考えていますが、間違いはありませんが、正しくはありません。
正しくは、むし歯を削りとるだけでなく、目に見えない細菌を滅菌消毒除去するのが本来のむし歯治療です。
根管治療も同様です。
根管治療は「歯の神経を取る治療、抜く治療」といわれています。
これは間違いです。
根管治療とは、歯の内部にまで及んだ“細菌感染”を取り除く治療です。
細菌感染を取り除くために、結果的に“歯の神経を取り除く”のが根管治療です。
ここまでは大丈夫でしょうか?
この根管治療の方法として、現在、日本で行われている方法は大きく分けて2種類です。
①保険治療における根管治療
これは、ラバーダムやマイクロスコープ、ニッケルチタン製ファイルといった器具と使用せず、根管内に薬剤(パラホルムアルデヒド製剤)を塗布します。
この薬剤は、たんぱく凝固作用があり、歯の内部の細菌や神経組織を凝固壊死する作用があります。
根管内で貼薬することで気化し、根管内行きわたり、徐々に凝固壊死させ、根管内を滅菌消毒します。
日本の保険医療では、多くの患者様を拝見する際に、長い時間を掛けて治療するのは現実的ではないのが現在の保険歯科治療です。
そのため、このような薬剤を長期間多数回にわたり、短い時間で行うことで、根管内を滅菌消毒します。いわゆる保険診療範囲内での根管治療です。
しかし、実際に根管内をみていないこと、また見ていたとしても、肉眼では30cm離れた1cmにも満たない歯の内部、さらに場合によっては60ミクロン以下のサイズの根管内部の感染を清掃消毒するのは非常に困難を極めます。
そんな困難な状況でも、何とか痛みのある患者様の症状を取り除こうとしているのが、現在の保険における根管治療です。
当然、ラバーダムなどの使用はありません。
そのため、治療中に唾液が根管内に混入することもあり、感染を取り除こうとしているにも関わらず、感染させてしまいかねないリスクも伴います。
②保険外治療による根管治療
これは当院のyoutubeチャンネルでお見せしているような治療方法です。
マイクロスコープやラバーダムを活用し、治療中の感染を予防しつつ、徹底して根管内部の感染を取り除く術式です。
この治療の際、歯の内部に神経はなくなるため、歯自体の知覚はなくなりますが、歯を支える骨、周りの組織には知覚あります。
根管治療では、その組織へも器具が達します。薬剤も影響を与えるでしょう。
当然、治療に麻酔は絶対必要です。
再根管治療では、おっしゃる通り、歯の神経はないはず。
なら痛くないはずなのになぜ痛む?それは根管内に感染が残っており、歯を支える歯周組織が痛んでいるからです。
その治療をするならば、麻酔、必要ですよね?
日本では便利で安価な保険治療があるため、本来の目的とは違った解釈が、根管治療では為されているように感じています。
根管治療に関わらず、歯科治療はすべて「外科治療」です。
ほぼ全てにおいて、麻酔は必須です。
ぜひ、その前提で今後の勉強を、そして歯科衛生士として頑張って頂ければ、患者様の苦労は報われるのではないかと感じております。
ぜひよろしくお願い致します!