いつも見させていただいております。
歯髄が生きているは、露髄したときに出血がない時だけなのでしょうか。
出血が出てきても異常な場合は残すことができないと言われました。
その意味がわからないのですが、出血がなくて死んでいる、出血があってもだめとなると、どんな感じだと大丈夫な神経のサインなのでしょうか。
ご質問が的外れだったり、間違っていましたら申し訳ございません。
コメントありがとうございます。
ご質問は的外れではありません。ご安心ください。
的確に分かり易く解説できればと思います。
よろしくお願い致します。
まずは、むし歯の進行、そして、それに対する歯の神経の炎症についてお話しします。
むし歯は唾液中に存在する細菌の感染症です。
細菌が歯を溶かし、内部に感染を拡げていく病気、これがむし歯です。
感染症なので、徹底的に取り除かないと治りません。再発します。
しかし、我々歯科医師は、その「細菌」を診ることはできません。
細菌は0.5~1ミクロン、人間の目で認識できるのは100~200ミクロンです。
見えません。
そのため、細菌がとかした部分、起こした炎症部分を取り除くのが、むし歯治療となります。
むし歯が歯を溶かし感染、2層目の象牙質があと1.1~1.5mmとなった時に、神経に炎症の兆しが認められるそうです。
たとえば外で転んで傷をつくり、ばい菌がはいると、傷口は炎症を起こします。
炎症とは、「体を治そうとする反応」です。具体的には、その傷口に「血液」を集め、ばい菌を殺菌し、傷口を止め、傷口を治そうとする反応です。これが炎症です。
歯の内部でも同様のことが起こります。
①細菌が感染、歯が溶かされる。
②そこに血液が集まり、殺菌しようと血液をさらに流し込む。
③それでも治らない、放置していると、殺菌しようと血液の流れが高まり炎症が強くなる
(出血は止まりづらい状況)
④細菌に負けててしまい、神経が徐々に壊死、死んでしまいます(もはや血液循環すら無い)
⑤さらに細菌は深く進行する
⑥その進行した先の神経を細菌が侵す。
⑦ここから先は②~⑥をループ。
⑧そして徐々に神経全体を侵していく
⑨最終的には神経全体が強く炎症あるいは歯髄壊死となり、根管治療が必要となる
こんな流れで歯の内部へ細菌感染が拡がっていきます。
その細菌を取り除くのがむし歯治療です。
むし歯の進行度合いによって、その感染度合いによって、治療法が異なります。
むし歯が浅ければ、神経に達していなければ、間接覆髄法。
達していれば、直接覆髄法。
部分的に神経が強い炎症を起こし元には戻らない(これを不可逆性歯髄炎といいます、出血が治まらず、その血液はどす黒い状態)、あるいは、すでに神経が死んでしまっている(=歯髄壊死といいます、血流は全くありません)場合は、その部分のみの神経を取り除く部分断髄法。
殆どが不可逆性歯髄炎、壊死している場合は根管治療です。
以下の動画、以下の部分で解説しています。ご活用下さい。
https://youtu.be/Ukmi7sQBdUc
02:35 「歯の神経を残す治療」を解説!
この判定基準は2つの方法で判定します。
(1)術前の症状
(2)実際に神経を診る
この2つです。
(1)については以下の2つのリンクで解説しています。
ご一読いただくと理解が深まります。
「治る歯髄炎」と「治らない歯髄炎・歯髄壊死」の比較、判断基準とは?
https://miyazaki-dentalclinic.com/22012
神経を残せるか否か?その症状からチェックする表について
https://miyazaki-dentalclinic.com/24628
(1)の段階で、鎮痛剤を服用されている場合は、ほぼ根管治療確定といえるでしょう。ただし、この「痛み」の感じ方は人ぞれぞれです。そのため、確定的な診断基準とは言えません。
そのため、(2)のステップである「マイクロスコープとラバーダムを活用した上で、実際にむし歯を取り除き、その神経の”炎症度合いを診る“こと」これが大切になってくるのです。
実際に診たとき、どのようであれば歯の神経は残せるのか?
どのようであれば残せないのか?これについて、動画で実際の神経の病状をマイクロスコープで診て頂きつつ、その判断基準を解説したリンクを添付します。ご活用下さい。
https://miyazaki-dentalclinic.com/22037
・歯の神経は健康であれば、たとえ露出しても、たとえ触れても、たとえ傷つけても、2~5分で早期に止血します。これが健康な神経であり、感染していない可能性の高い神経です。
・周囲のむし歯を削り取り、歯の神経が露出。周囲のむし歯を削り取ったにも関わらず、出血が治まらない。これは神経への感染が疑われます。
そのような際は、出血している部分を削り取っていきます。削り取る事で、次の2つが確認されれば「感染が取り除けた可能性」と「今残っている神経には感染がない可能性」が高まります。つまり神経を残せる可能性が“高まる”ということです。
1)2~5分で止血すること
2)残る神経には血流があり、毛細血管が認められ、崩れていない
上のリンクで見ると、血流が無い歯髄壊死の状態、健康な神経の状態を見て頂けます。この組織が健康であるか否かの鑑別診断には、歯科医学的基礎知識が必要となるかもしれません。
この判断基準は、マイクロスコープとラバーダムを活用することを前提としています。
しかしこの判断基準にはまだ科学的根拠を示す論文は少ないものの、最近のヨーロッパ歯内療法学会では、その臨床的有用性の高さから、今後、論文を多く集めていこうとする考え方が高まっています。
上記に述べさせていただきました内容は、以下の2つの動画で解説させて頂いております。
【前編】歯の神経『半分でも』残せる!? 根管治療せずに、歯の神経を残す「歯頚部断髄法」とは何か?
https://youtu.be/Ukmi7sQBdUc
後編】歯の神経を残せ! 実際の治療の様子!(歯頚部断髄法 Cervical pulpotomy with Microscope
https://youtu.be/lF4noZPRiEI
長文となりましたが、これらすべてをご一読いただくと、その概要が見えてくるのではないでしょう。ぜひご活用下さい!この回答が少しでもお力になれていれば幸いです!