「根管治療(根っこの治療、神経の治療、歯内療法)を行った歯は寿命が短くなる、脆くなる」と聞いたことはありませんか?
「歯の神経を取りたくない!」
「歯の神経を抜きたくない!」
「根管治療したくない!」
「歯の神経を残してくれる先生を探しています!」
大変多くの患者様からのご質問、ご来院を頂いております。
当院へのご相談数、来院数は都内でも随一ではないかと思います。
当院では可能な限り歯の神経を抜かずに残す治療を心掛け日々の臨床に取り組んでおります。
その具体的方法は、ラバーダム&マイクロスコープ&MTAによる覆髄法です。
しかしこの術式をもってしても残せない症例があります。
① すでに歯の神経は回復することのない炎症を起こしている場合
② 既に歯の神経が死んでしまっている場合
この2症例です。
①を不可逆性歯髄炎
②を歯髄壊死
といいます。
このような症例ではいたずらに「治療時期を遅らせる」ことで、むし歯は進行し、さらに歯の内部を削る量が多くなるばかりでなく、周囲の歯槽骨にまで悪影響を及ぼします。
「歯の神経を残したい、取りたくない」とする希望・不安の裏には「歯の神経を取ると、歯が弱く脆くなる」とする根拠があるからではないでしょうか?
でも、その「弱くなる、脆くなる」ってどの程度でしょうか?
本当のことでしょうか?
弱く脆くするには他の原因があるのではないでしょうか?
この点についてこの動画で分かり易く解説しています。
ここに3つの論文があります。
① 根管治療歯と生活歯の含水率の違いは2%以下
(Papa et al Endod Dent Traumatol 1994)
② 根管治療歯と生活歯の生物学的特性の変化は殆どない
(Sedgely and Messer J Endod 1992)
③ 根管治療を行っても、剛性の低下は5%であったが、辺縁隆線を超えて形成を行うと、64%の剛性が低下する(Reeh and Messer JOE 1989)
①と②の論文は、根管治療をしても、歯は脆くならないことを証明する論文です。
根管治療をしても、歯は弱くも脆くもなりません。ご安心下さい。
但し、③の論文はその逆。歯が脆くなることを証明する論文です。
その内容は、根管治療の際に「削られた歯の部位」によっては、歯は脆くなることがあることを示しています。
その部位は「辺縁隆線」。写真の赤矢印部分です。むし歯は唾液中に存在する細菌の感染症です。この「辺縁隆線」部にむし歯があれば削らざる得ません。
以上のことを分かり易く簡単に解説すると、
歯の神経を取る事で、約2~5%程の剛性が低下します。つまり少しだけ弱くなりますが、おそらく皆さんが想像しているほどは弱く脆くはならないということ。
そして歯の削り方、神経を取った歯の後に残る「歯の量」によって、その剛性は大きく影響を受けるということです。
つまり「削り方」「むし歯の削除量」によって、歯の弱くなる・脆くなる程度は大きく影響を受ける!ということになります。
根管治療をした歯がすべて脆くなるわけではありません。
根管治療をした歯がすべて差し歯になるわけでもありません。
その病状によって最小限の切削治療が可能なのです。
歯の神経にまで感染が及び、その炎症が回復しない場合、あるいはすでに神経が死んでしまっている場合は、これ以上の感染を拡げないためにも早々の根管治療が必要です。
早々に行うことで、これ以上の感染拡大を予防できるのです。
つまりはご自身の歯を出来るだけ削らずに残せる!ということになります。
これは、根管治療後の歯が弱く脆くなりづらくなることにつながります!
歯の神経を残すことも大切ですが、たとえ歯の神経を失ったとしても、その後の、根管治療後の歯を削らずに残すことの方がとてもとてもとても大切なのです。早期に治療すれば、歯は永く長く使用できるのです。
そのためには、早期発見・早期治療。ラバーダム+マイクロスコープが不可欠といえるでしょう。