日別アーカイブ: 2019年5月13日

親知らずの手前の歯 横からむし歯 神経の治療必要と云われた ②

横にはえている親知らずの手前の歯がむし歯になり、メールでご相談いただいた患者様の症例です。

ご相談内容、およびそれに対する回答につきましてはこちらをご参照ください。
https://miyazaki-dentalclinic.com/23740

上写真は術前の状態です。
当院では、本症例に対して神経を残す治療を行いましたが、痛みが治まらず、結果根管治療を行いました。

以下の動画は、その治療の様子です。

なぜ神経を残せなかったのか?そのような症例はどのような状態なのか?について説明させて頂いております。


むし歯とは?どんな病気?細菌の感染症本症例の患者様は、初診時、鎮痛剤を服用して来院されました。

鎮痛剤を飲まないと、寝てるときに痛みがあり、普段でも痛むことがあったようです。

治療前に、この神経は残せるか否か?根管治療が必要か否かを診断する際に役立つチェック項目があります。

Ricucciらは、症状から見た根管治療が必要か否かを判断する基準について論文で報告しています。是非こちらをご参照ください。

本症例では、根管治療が必要となる不可逆性歯髄炎の診断基準となる以下の項目すべてにおいて陽性でした。
・ 痛みの既往がある
・ 鎮痛剤服用の既往がある
・ 誘発痛、自発痛が持続する(10分以上)
・ 夜間に痛みがある
・ 日常生活に支障のある痛み
・ 患者さんが痛みの原因となる歯を特定できない

術前に上記のような症状がある場合、神経の炎症は治癒することが非常に困難となるため、根管治療が適切な対処法となります。

https://miyazaki-dentalclinic.com/22012 神経を残せる基準チェック項目 どんな症状ならば神経を残せるのか患者様も病状はご理解されていたのですが、気持ち的に「根管治療」を受け入れることが出来ないご様子でした。しかし治療はしなくてはいけないとい気持ちもあり、大変迷われている状態でした。

患者様には『マイクロスコープで歯髄を観察し、神経を残すことができれば残しましょう。後に痛みがでてしまい、治らないのであれば根管治療をしたほうがよろしいでしょう』 と説明させて頂いた上で治療に臨みました。
「でも、こんかんちりょうのかのす

実際、マイクロスコープで歯髄を観察すると、歯髄本体からではなく、その縁、歯の先端部分より出血があることが認められ、5分以上たっても止血することはありませんでした。

再度施術中に、患者様にご説明しましたが、本日は根管部歯髄は取らずに終えてほしいとのご希望をいただき、水酸カルシウムを貼薬し治療を断念しました。

予想通り、後日、痛みが治まることはなかったため、患者様もご決断され根管治療をすることとなりました。

患者様のご理解とご希望の上での本症例の結果ではありますが、神経を残す治療が「無駄」となったことが非常に残念でなりません。

ただ、この結果があったからこそ、患者様も納得し、今後の根管治療に臨めるようになったことも事実です。

これを良しとするか無駄とするかは、患者様それぞれなのかもしれません。

しかし、当院では、科学的根拠に基づき、可能な限り「必要ない治療」はしたくないと考えています。歯科治療は1度で十分です。

当院では一生に一度の歯科治療、やり直しのない歯科治療を目指しています。
この教訓を明日の患者様に生かし、日々精進です。