日別アーカイブ: 2019年5月3日

歯の神経を取る 抜く 根管治療の理由

根管治療 むし歯が神経に達している 根っこの治療 神経の治療 歯内療法 マイクロスコープ  CT ラバーダム 症例 専門医 関東近郊東京都内港区千代田区虎ノ門新橋内幸町霞ヶ関汐留日比谷神谷町銀座 

ズキズキする痛みを主訴に来院された患者様。上顎の第一大臼歯。
その歯には銀合金の詰め物(インレー)が装着されていました。

上動画は、その治療の様子です。


むし歯は唾液中に存在する細菌の感染症です。

根管治療が必要な場合は、以下の2つの状況の場合です。
不可逆性歯髄炎
② 歯髄壊死

① 不可逆性歯髄炎とは、むし歯(=細菌感染)が歯の内部深くにまで進行し、その感染により、神経(=歯髄)に強い炎症が認められ、その強い炎症がゆえに、炎症が治まらない場合をいいます。

② ①の状態が進行し、神経が壊死(死んでしまう)した状態を云います。

本症例は、①に該当します。

本症例では、マイクロスコープで神経(=歯髄)の状態を観察すると、歯髄から排膿が認められました。

また、可逆性の歯髄炎(⇒神経を残せる状態)であるか否かを診断する方法として、「NaOCL溶液(次亜塩素酸)を露髄面に5~10分間接触せて、止血できるかに基づいた方法が信頼性が高い(Matsuoら1996、Bogenら2008)」方法を適用しましたが、止血することはありませんでした。

神経は残せるのであれば絶対の残した方がいいでしょう。
従来の考え方である「露髄したら神経は取らなくてはならない」は、昔の考え方です。
上記のように、科学的根拠に基づいた症状からの推断とマイクロスコープによる実際の神経の病状を精査した上で、神経を取るか否かを決断すべきでしょう。

本症例では残念ではありますが、根管治療(神経の治療、根っこの治療)が、これ以上感染を拡げないためにも、適切な治療法となります。

根管治療を受けた歯(=神経の治療・根っこの治療を受けた歯、失活歯)は、その強度が経時的に脆く・弱くなります。その根拠を示す文献が以下の通りです。

〇 根管治療を受けた無髄歯(=歯の神経を取った歯)は、咬合力を感知する受容センサーが反応するまでに有髄歯と比べて2.5倍の咬合力が必要とされる(Randow & Glantz 1986 Stanley 1989)。
つまり、無髄歯に咬合力(=噛む力)が加わって受容センサーが反応した時は、すでに大きな咬合力が加わってしまった後になるということ。

〇根管治療を受けた歯は、歯を保護する機能が低下しているので、歯冠および歯根破折の頻度が高くなる可能性がある(Fussら2001、Lertchirakarnら2003、Mirekuら2010)


このような科学的根拠に基づく文献があることからも、根管治療(神経の治療、根っこの治療、歯内療法)はできれば避けたい治療です。

そのためにも、定期的に歯科医院を受診して、むし歯は早期に治療することをおすすめします。また、可能であれば、「神経を残す治療」を行うことが重要です。